飼料の配合を鶏自身にまかせ、毎日トラックいっぱいの青草やハーブ、セラミック(多孔管)でろ過されたキレイな水を。
鶏フンを堆肥化させている鶏舎の床は森の腐葉土のようになっています。
この環境のなかで、臭みがなく、生でも安心して食べられる健康な卵が産まれます。
1980年に兄と養鶏をはじめました。ところが、2万5千羽のヒナを導入するやいなや、1日に100羽、200羽とヒナが死んでいったのです。
検査をして出てきたのが大腸菌と黄色ブドウ球菌。
当時、大学の飼料学専攻を卒業したばかりで、菌は薬でやっつけるという考えしかなく、消毒薬は1日2回。抗生剤を1週間与えつづけると、ヒナの死はぴたっと止まりました。
でも、3年ほどすると薬は効かなくなり、次の薬も3年、その次の新薬は1年しかもちませんでした。
抗生剤で血中濃度を上げ、菌を抑えることはできても、ヒナは血色がなくなりどんどん弱っていきました。
貧血になっていたり、からだが腐りはじめているようなヒナが、また100羽、200羽と出てきて、処理も追いつかず、バナナ畑に放置する状態になりました。
そんなある日、ケージのなかで半日ももたなかったヒナが畑では死なないでいることに気づきました。
エサも薬も与えず、消毒もしないのに、むくむくと立ち上がってきて、元気になっているのです。
バナナ畑に放置していたヒナは何を食べていたのかと興味が沸いて、死体を解剖すると、からだのなかには土や草、枯れ葉だけ。つまり濃厚な良いエサといわれているものは全く入っていませんでした。それで単純にその環境を鶏舎の中に持ちこんだのが、今のエサづくりのはじまりです。
まず山の枯れ葉や腐葉土をエサに混ぜてみると、鶏はよく食べるし、体調がよくなりました。
知人からアワビ茸の菌床(抗生剤や添加剤など人工的なものが入っていると茸は生えない)をもらって、粉砕して鶏にあげるとさらに体調がよくなりました。
それなら飼料の配合は鶏に任せようというエサづくりがはじまり、5年をかけて現在(とうもろこし、ヨモギ粉末、海藻粉末、木酢液、牡蠣殻、山土を配合し、有用微生物ぼかしを加えたオリジナル配合)に至ります。
菌糸体は繊維が強いので、繊維を分解する菌はないかと調べ、いくつかの微生物資材を経て出合ったのが、乳酸菌と酵母、光合成細菌の3つをブレンドした有用微生物です。シンプルに、安全に、どこででも、発酵飼料をつくることができます。
発酵飼料やトラックいっぱいの青草を毎日あげるのに、平飼いにして鶏が自由に食べられるようにしました。
エサ箱を見ると、何を食べるか食べないかが一目瞭然でわかるからです。
鶏舎内では、微生物資材を用いて、木くずや鶏の食べ残しとともに、鶏フンを堆肥化させています。
それが、50cm以上のふわふわと柔らかい森の腐葉土のような「床」となって、湿度や温度を調節したり、鶏の腸環境を整える発酵食品(人間でいうとヨーグルトや納豆のようなもの)になっています。
この「床」は20年余り変えずとも、完全に循環していて、匂いもなく、もちろん抗生物質や消毒薬を用いることはありません。
健やかな鶏たちは、臭みがなく、自然な黄身の色の、生でも安心して食べられる健康な卵を、日々産んでくれます。
全国的に言うと、10万、20万羽…200万羽というところもあるというのが今の養鶏のスケールで、みやぎ農園はたった1万羽前後という次元です。
鶏舎内は鶏の生理・習性に合わせた環境を作り、毎朝、卵を手づみしています。
一般的な養鶏は、コストダウンのため、1人で何羽飼えるかという発想です。
でもコストを落とす「技術」は共有物なので、いずれ皆コストダウンに到達します。
一方、安心とおいしさは、勝負の世界で、コストダウンとは違う次元です。安心でおいしいと思う人たちとのシェアを私たちがしっかり見失わないようにしたいと考えています。
また、昔の養鶏では、廃鶏は家族のタンパク源であり、近隣の農家にも分けることで養鶏所は地域と関わりました。
今は一部の鶏文化の地域以外では、廃鶏は処理費用を払って処理するものになっています。鶏フンも同様。
廃鶏を食べ、鶏フンは良質の堆肥にして畑に還元して作物をつくります。
有用微生物を培養し、最適な状態で農家に供給しています。
また売り先を開拓し、生活者の「おいしい」「他の野菜と違う」
という声が農家に返ってくる仕組みをつくることも、みやぎ農園の役割と考えています。
「有用微生物を活用していますよ」とおっしゃる農家はたくさんいました。
でも彼らの畑に行って話を聞いてみると、有用微生物を肥料だ、消毒薬だと言う人もいて、限りなく自己解釈の世界でした。
これはまずい、リセットしましょうと有用微生物の開発、販売会社に提案し、何が大切で、何を省いたらいけないか、畑用の培養の仕方、ぼかし(発酵肥料)のつくり方を、まず私に教えてください、とお願いしました。
あちらこちらで開かれていた有用微生物の講演会では抗酸化力があることや、ものを腐らせないことが強く印象に残るようで、“腐敗神話”があり、有用微生物を培養する容器をきれいに洗わない農家が多くいました。
有用微生物は雑菌に弱く、清潔な環境で培養するのが基本です。
多くの農家の有用微生物培養液には空気中の酢酸菌が入って酢になってしまっていました。
カビを落とすくらいの力はあるけれど、まわりの菌を増やす力はまったくない。攻撃する側。わざわざ培養して、菌が増えないようなものをつくっているから、うまくいくわけはありません。
それを改めてもらうことからはじめました。
養鶏で有用微生物に出合った当初は市販品を使っていましたが、現在はみやぎ農園で培養し、一番最適な状態のものを農家(正会員約90人)に供給しています。 たっぷりしっかり効果が出るようにしています。
農家が何に困ってるかがわかってくると、私たちは何をすべきかというのが見えてきます。
そこで農業全体の管理システムであるGAP(適正農業管理:Good Agricultural Practice)の推進を図っています。2015年に2人のスタッフがGAP評価員の資格を取得しました。
また、会員農家がマクドナルド、グローバルGAPを取得するための委託管理をみやぎ農園は行なっており、
2016年から正式に認証取得農家としてレタス出荷を行なっています。
これまでは微生物資材を使った農法や、特別栽培というラインまでで農家と関わってきましたが、GAPというシステムを使ってもっと農家に入りこめます。例えば、大雨が降った時に表土が流れてしまうのはなぜか、台風で塩害になるのはなぜか、というような理屈を説いていくことになります。
GAPのガイドラインにそって、畑のどこが問題なのか、なぜ問題なのかを明らかにし、どうすればいいのか示していきます。